insight's diary

インサイト大西です。不定期更新です。よろしくお願いします。http://insightcorp.jp

コンタクトセンターQA職も、感情労働です

コンタクトセンター、コールセンターQA(品質管理)の業務はますます重要性が増すここ近年ですが、この数年以内にQA組織を立ち上げた、または、てこ入れをした、もしくはこれからてこ入れしたい、と思っている企業も多いのではないかと思います。

既存のQAチームがあったとしても、モニタリングの考え方が変わったり、より顧客目線でのモニタリングを実施しようと、QA担当のみなさんは日々腐心していることでしょう。

以前あるお仕事で「タダでモニタリング評価をしてほしい」と言われたことがあります。(今はなくなっていますが、ただでやって頂戴、という仕事、以前は少々ございました。今はすべてお断りしています、さておき)そのモニタリングをして思いました。なんでこんなに大変な仕事なのに「軽い感じで聞いてくれたらいいから」「ちょっと音声聴くだけじゃん」と言われなきゃいけないのか。

まったく分かってないんです。モニタリングがどんなに大変な仕事か。どれだけ疲れるか。

でも、このことをきちんと発信する誰かがいたでしょうか。いません。そのため私が発信します。

コールセンターオペレーター職は、今や感情労働としてようやく大変なものだと認識されるようになってきました。その品質を支えるQA業務はというと、これまた感情労働です。なぜか?それは、お客さまとオペレーターの対話を聞いて、お客さまに感情移入し、オペレーターにも感情移入し、改善点を見出し、そして育成指導ポイントを見出す。センターによってはQA担当者が面談を行います。オペレーターの成長も担当する、つまり育成やコーチングにも携わるわけです。どれだけのスキルを身につければよいかというと、それはもう大変です。

コールセンターQA職の人材を大切にしてください。オペレーター同様1on1などの面談を欠かさずメンバーをケアしてください。そして、QAがスキルアップできるよう、たくさん良いサービスについて共有したり、外部研修を受けさせたリ、たくさんの情報を提供するようにしてください。QAのレベルがセンターのレベルを決めます。もちろん、SVも関連しますが、その話はまた別途。

クレーム対応の常識が変わりつつある

コンタクトセンターでのクレーム対応については、私自身もオペレーター時代から今の今、本日まで、20年ちょっと、ずっと変遷を見てきました。20数年前は自分自身がオペレーターとして四苦八苦、初めの頃は泣きながら対応していましたが、今は会話を分析して、どうすべきだったか、次回以降はどう対処すべきか、SVさんたちがなるべくうまく対応できるようアドバイスすることに腐心しています。年間数百本のクレーム対応コールを聴いて分析しています。

さて、クレーム対応と言えば…

  • 話をよく聴く
  • 共感する
  • 謝罪する

などが定番ではありませんか?私も昨年くらいまではこれらの内容も伝えておりました。しかし、昨年くらいからでしょうか、ちょっとクレームを言ってくるお客さまの潮目が変わった、というか、これまで通りの対応では立ち往生するようになってきました。特に、共感です。

  • 共感する→共感すると、「わかるなら俺の主張を通せ」と逆効果

以前の「共感」ですが、「共感」スキルをこれまで高めてきた我々は、結構この1年苦しんだな、と言う印象を持っています。

共感の代わりに「受容」することを提案します。

<例>

お客さま「こんなこと普通はありえないだろう、だから返金しろよ」

これまで「ご不快な思いをさせてしまい(共感)申し訳ございません(謝罪)。」

これに加えて非言語的コミュニケーションとして心を込めて抑揚をつけて伝える、というのが通常でした。

これから

パターン1

「(1)返金をすべきであるとお考えですね。(2)誠に恐れ入りますが、返金することはできません。(3)申し訳ございません。」

パターン2

「(1)さようでございますか。(2)ご返金することが出来ればよいのですが(斟酌)、あいにく承ることが出来ません。(3)申し訳ございません。」

 

(1)は受容です。共感していません。肯定も否定もしていません。そういう考えなのですね、受け止めました、ということをフィードバックします

(2)は事実伝達です。クッション言葉などを使い、冷たくなり過ぎないように気を付けます。パターン2のほうでは、より斟酌する言葉を添えています。

(3)当然ですが、謝罪は必要です

 

切り替えがうまくいかないかもしれませんが、ぜひチャレンジしてみてください。なお、お客さまタイプにより、上記すべてが良いわけではありません。お客さまのお話しを良く聴いてご判断ください。

なお、悪質なクレームについては、企業側から電話を切りましょう。礼儀正しく毅然と、失礼のないようにすることが重要です。

団塊世代から50代へとクレーム顧客が変化してきました。この変化は大きいと思います。また気になることがありましたら記事にします。

※当社はクレーム対応のみの研修、コンサルティングは基本的にお引き受けしません。あくまで、QAやSV育成の一環として承ります。

インサイト株式会社 | コンタクトセンターの品質の向上と育成のエキスパート

お客さま評価とQA評価は別のもの

久しぶりのエントリになりましたが、最近混同してしまう方が多いので記事にします。

 

たくさんのコンタクトセンターでお客さまから応対についてのアンケートを取得するようになってきています。これはとても良い流れで、今後も継続すべきです。

しかしこのアンケート結果に強く影響され「お客さまが満足したと言っているのだから、QAの評価やSVのフィードバックは不要なのでは?」という考えが浮かぶことも増えているようです。

QAはQuality Assuranceの意で、品質保証の意です。応対の品質保証を管理する部門がQAです。その管理の”結果”、お客さまから一定の評価をいただけたということなので、その管理を怠ってはいけません。お客さまからの評価が良いのだからQAが不要だと言う考えは、本末転倒です。

また、QAでの耳合わせ・カリブレーション時にお客さまアンケートの結果を参照するのは構いませんが、QA評価にそれが影響することが無いようにしてください。お客さまアンケートの結果取り扱いは大変難しいものです。お客さまの事前期待、それまでのCX、それこそお客さまのその日の体調、気分などの知覚変化も影響します。また、加えて言えばお客さまはサービスのプロフェッショナルではないので、その評価が正確かどうか、というのは、別問題です。

※当社ではQAコンサルティングを積極的に承っております。

インサイト株式会社 | コンタクトセンターの品質の向上と育成のエキスパート

日本のオペレーターの意識は低い…ワケない。

今回のタイトルの件、海外のセンター訪問経験等がある方からよく聞かれる言葉です。実際、私も多少なりともそう思っている時期がありました。それもあり、海外に頻繁に行き、なるべく現場に近い皆さんとお話をする機会を増やしてきました。

 

「日本のオペレーターは意識が低い」

「日本のオペレーターは誇りを持っていない」

 

上記のような言葉を聞くと私自身は胸がぎゅっと締め付けられる思いでした。私もこのキャリアをスタートしたのはオペレーターですし、今はオペレーターのみなさんの指導をしている身です、これは、かなり私にとってもキツイ言葉です。

その後海外でたくさんの知見を持つ方(現地のセンター含む)と情報交換をして分かったことがあります。それは「意識高い!」「すごい!」と思うのは、コールセンター内部のみなさんとBtoBで接しているからなんですね。

ちなみに私はほとんど毎日、コールセンター内部のみなさんとBtoBで接しています。意識低いなんて思ったこと、ほとんどありません。皆さん、毎日もがき苦しんでいます。とても悩んでいます。向上のために前に進もうとしています。

いっぽう、日本では当たり前ですがBtoC、自分がCとして顧客対応を受ける経験から、ご自分が受けた苦いサービス体験をもとに「意識低い」「あれはだめだ」「思考低下」と仰るわけです。

例えば今回私はタイに来ていますが、残念なことにモニタリングをしても言葉が分かりません。なので、良し悪しの判断が付きません。ですが、お話を伺った内部のみなさんはやはり意識高いですよ!日本と同じです。

ただし、アメリカで自分がいた会社のコールモニタリングをしたとき、正直驚きました。「こんなんでいいの…?」と。でも、みなさん職業意識は高かったですよ!誇りも持っていました。

 

というわけで、海外と比較して「日本のオペレーターの意識低い」と言う方は、そのサービスをBtoCとしてふんだんに受け、サービス設計に問題がないかトータルで分析してから、そのようにおっしゃってください。オペレーターの対応が悪いのではなく、その企業のサービス設計に問題があることが多々。つまり問題はそこにあります。もっと現場最前線のオペレーターの声に耳を傾けてください。

アメリカでQAの勉強をしてきました(簡易レポート)

2017年4月初旬、アメリカに行き、QAの勉強を改めてしてきました。ここ数年、良い電話対応とは何か、Customer Effortの考え方から始まりCustomer Experience(CX)、Customer Journey Mapをモニタリングの概念に取り入れるなどの工夫を取り入れてきたものの、何か抜けていることがあるのではないか?と日頃考えていたことがきっかけです。

BenchmarkPortal社のQuality Assurance Trainingを受け、BenchmarkPortal Certified Quality Assurance Professional.CQAPを取得しました。

 

私自身が改めて認識したことは以下2つ。

  1. 日本ではCustomer Care Skillsだけの評価である(モニタリングシート)
  2. QA機能が何たるかの定義がされておらず、あいまいである

1.についてはずっとうすうすと感じていましたが、当然のことながら応対は「マナーを守り、きれいな言葉遣いと声で共感性を持ち対応するだけではダメ」なのです。業務知識は十分か、会社としてしなければならないことはしていたか、ルールを守っているか?などのいわゆる「業務知識」や「業務遂行能力」に関わる部分も含んでのモニタリングシートであるべきだと痛感しました。もちろん、効率的な数値部分は別の指標(AHTなど)で見ているという話もあるでしょうが、できればそのコールに対してはどうだったのかなど、1本1本、モニタリング評価をするものについてもその業務視点を取り入れるべきだと痛感しました。

 2.については、QAはVOCなどコールのトレンドを把握しているべき部門であるという話を聞き、ハッとしました。確かに、コールセンター部門内ではコールトレンドを意識して研修資料への反映などに活かしています。ただ、それを他部門に発信して、サービスの改善や新規ニーズの発掘など、マーケティング的な観点で他部門にフィードバックしているかと言われるとまだまだの企業が多いのではないかと思いました。QAの定義は、単に応対品質向上の機能のみならず、役割は大変大きいのです。サービスリカバリ(アンケートでBad commentをされた方にアクションを取り、フォローすること)の機能もQAより上位とは言われていますが、これらの機能もQAが兼任してもいいわけで、QAの役割は思っているよりも大変大きいのです。役割の定義しなおし、見直しをするべきでしょう。

 

私のQAコンサルティングについても、定義や数値化にもっとこだわっていきます。もちろん、日本の強みである、Customer Care Skillsの発展はそのまま続けていきます。

f:id:insightcorp:20170426100351j:plain

<Site tour report>Dialogue Direct社見学

I have visited Dialog Direct on Oct 25. The tour was impressive. Below report were written in Japanese.

少しずつ、ICMI@Dallasツアーの報告をしようと思います。

初日は、サイトツアー。午前、午後と行ってみたい企業を1社ずつ、計2社まで選択できます。当日選択するのではなく、事前希望を出して、場合によっては抽選、ということになるようです。

まずDialog Direct社を訪問しました。一言で簡単に説明すると、いわゆる「アウトソーサー」です。いくつかUS国内に拠点がある中の一つで、”私たちは割と小規模なの、約5000人のエージェントだからね”と本気で仰っていたのには仰天しました。まぁ、アメリカですものね。

www.dialog-direct.com

受付を済ませてエントランスを入るとそこは…カラフルな風船がたくさんプカプカ浮いていて、ハロウィーンの飾り付けで賑やかなオフィス、あぁ~アメリカのコンタクトセンターだ!と懐かしい気持ちに。(センターエリアは撮影NGなので、写真はありません)その後、いくつかのセンターエリアを見学させていただき、SVさん達の紹介があったりと、リアルなセンター視察でした。

f:id:insightcorp:20161201214851j:plain

※写真は、顧客を怒らせがちな、避けたい6つのフレーズについて説明する同社のMary氏

結構長いツアーだったので、文章にすると非常に長くなってしまいます。私が気付いた点のみになりますが、箇条書きしていきます。

<全体の雰囲気など>

・飾り付けが上手。風船などもただの遊びではなく、スキルの数を示しているのだとか。(コンタクトセンターでは何でも可視化することが大切です)

・皆がすれ違う廊下には、優秀なAgent(アメリカではオペレーターと言わずエージェントというのが一般的)のモノクロ写真が貼ってある。(自分の写真が大きく張り出されていたら、仕事への誇りとか、存在意義を感じられることでしょう)

・トレーニングルームやミーティングルームなど含め、日本と何か大きく違うことはない。ただ、アメリカは掲示物が多い。ミッションなども含め、視覚でアピールすることは得意だと思う。

<ブース内>

・日本でいうといわゆる”オープンスペースでの運営”が基本のようで、このブロックはA業務、こっちからはB業務、といったざっくりとした分け方をしていた。中には、競合同士の業務が並んでいたりと、日本ではあまり考えられない状況もあった。(日本のアウトソーサーも、オープンスペース、マルチ業務はありますが、その規模感が大きいと言えば伝わりますでしょうか…)

・SVやAgentの動きは日本の現場とそれほど変わらない印象。目で見ても、あぁ、OJT中だな、とか、質問に行っているなとか、ラウンドしているなとか、ほぼ変わらない。

 

さて、Dialog Direct社で私が最も印象深かったのは、<採用の工夫>です。アウトソーサーならでは、の点もありますが、応用できることもあると思いますので、ご参考まで。

<採用の工夫>

・業務への応募はIVRも利用している。その時に利用する応募時の質問に工夫を凝らしている

・Agentごとにカルテが音声を含めて一元化されている。もちろん、応募時の回答音声も含む。

・各業務で優秀なAgentが応募時にどのような回答をしていたかを分析している。また、その分析結果も含め、どのような質問をするとよいか、常にブラッシュアップしている。

・質問内容は、業務ごと(クライアント別)に分けている

→上記の考察ですが、日本でも採用面接時の質問に工夫をしているセンターもあると思います。まず、効率化のためにIVRを導入している点は良いと思います。また、その質問内容も適宜ブラッシュアップすることで、どんなことを聞けばよいか?また回答はどのようなものが望ましいか(言語)、また、どのような話し方をする人が良いか(非言語)のチェックが一気にできます。効率的です。カルテの一元化については、自社開発のソリューションツールを使っているようでした。

 

…と、少し解説するだけでこの長さです。他にもお伝えしたい点は山ほどありますが、Dialog Directについてはこのくらいで。次回に続きます。

インサイト株式会社 | コンタクトセンターの品質の向上と育成のエキスパート

 

日本のコール品質管理は、世界に負けてない

先月の話で恐縮ですが、ビズ旅セレクトで主催された、こちらのツアーに”団長”としてアメリカ、Dallasに行ってきました。https://biztabi.jp/tour/369

ICMIのことはご存知の方も多いと思いますが、私自身初めてのICMIのコンファレンスへの参加でした。全体は3日間で構成されており(毎回変わります)初日はサイトツアーとしていくつか選択された企業のコンタクトセンターに訪問。2日目、3日目は改善事例などのセッションに参加するというものでした。

ざっくりとした所感ですが、「人」に関するマネジメント、悩みは万国共通のものがあるなというところです。文化や習慣の違いによるものもありますが、根底はみな一緒。そんなことを感じて帰国しました。

USのコール品質管理について、特別に日本が遅れているという印象もありませんでした。むしろ、細かな点では勝っている部分もあると思います。いっぽう、活動の数値化など、指標管理についてはまだまだの部分もあります。

今回は「これだ!新しいアイディア!」というものは発見できませんでしたが、それよりも、日本のコール品質管理について改めて考えたり、改善事例を発表したスピーカーと意見交換して同意したりと、改めて日頃から取り組んでいる活動の方向性などには誤りがないことの良い確認になりました。

さらに、日本での取り組みについては、やはり海外に対してもう少しアピールしていくべき、と強く考えています。もう少し英語をしっかり勉強しなおして、来年以降の目標として取り組んでいきます。